第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
ヨーコの後ろにはシモンを始め、彼に近しい人物が集まっている
どうやら彼等も近くに潜伏していたようだ
以前見たボウガンではなく、背中に弓を背負ったヨーコは力強く私達に近付き、改めて口を開いた
「その作戦、狙撃主は私がやります」
唐突な言葉に私達はすぐに返せなかった
いやまぁ、協力してくれるのなら構わない―そう感じているとヨーコは更に続けた
「その子、狙撃っていうか射撃向いてないでしょう?」
「……は?」
意外な言葉に阿呆な声しか出ない
エリーが…射撃に向いてない…?
何を言っている、少なくともエリーはこれまで私達を後ろから他ならぬ射撃によって援護してくれた
なのに…どういう事だ?
「最初は単なる思い違いかと思ったけど、さっきの戦いを見て分かった。あなた、近距離向きの動きで弓を使ってるでしょ」
「オイ、ヨーコ」
続けざまに言葉を放つヨーコをシモンが後ろから諫めるが、ヨーコは言葉を続ける
「私も本業は狙撃だから似た武器持ってる人って気になるんだけど…こんなに何がしたいのか分からない動きって初めて…何でそれ選んだの?」
射撃を選んだ人には射撃を選んだ訳があり、それにより洗練されていく
だがエリーにはそれが無い
ヨーコの事は私はあまり知らないが、恐らく彼女は射撃一筋でやってきたのだろう
だからこそ彼女は射撃に洗練され、以前私達を助けた時のような力を発揮出来るのだ
長らく訓練と実戦を繰り返した、ある種のプロ的な技とか、そういう類いに分類される
故に彼女はエリーが気に食わない
自己流メソッドとかそんなのではない、最早"無茶苦茶"な事をしているから
理由が分からないのだ