第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
真っ直ぐ先に見えるエリーの瞳は相変わらず潤んではいるが、何かが動いた気がした
エリーは暫く呆けたように黙ったままだったが、ゆっくり口を開いた
「ん…信じる」
ゆっくり紡がれた言葉は確かに強い意思を感じさせて、確かなものであると感じさせた
「リリィが死ぬのは、私が死ぬより見たくない。皆でも同じ…だから私は、力を惜しまない。生きる事を、惜しまない」
「うん、私はそれを信じる」
エリーの言葉に笑顔で、しかし真摯に答える
それが今この場において、私を裏切らない事
エリーもミヤも、部長も、シンジ先輩も、ユウも、ケンタも―皆を信じる私を体言させる第一歩であるのだ
その後は暫く妙に静かだった
恐らく実質の囮となっていたエリーがターゲットから外された為、他の攻撃隊にターゲットが移り、攻撃を中止せざるを得なくなったのだろう
しかし、少なくとも私達の周りは少しだけ五月蝿かった
私がエリーと合流したと他の五人に送った為、再び全員集合となった
この層に入った後の私のように、今度はエリーが部長に怒られたが…そこはまぁ仕方ないだろう
エリー本人も素直に謝ったし、とりあえず一件落着…と言いたいがそうともいかない
相変わらずボスは浮遊している
今は攻撃に出るプレイヤーがいないので、本当に浮いているだけだ