第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
だからこそ私は、ここで新たな一歩を見据えよう
まだそれは一歩じゃないかもしれないが、確かな願いだった
「エリー」
ゆっくりと埋まった顔が上に、私の顔の方に向けられる
「エリーは少なくともこの世界…ゲームの中で凄い力を発揮出来る。でも…私も負けてないよ。届いたもん、エリーに。だから…私を、皆を信じて」
エリーがあのボスに向かった訳―ボスに勝てないと断じて、また私が暴走か何かするんじゃないかと疑念を感じた事と、秘かに持っていた膨大な力が皆に受け入れられないと断じていた
信じていない―言い方を変えるならネガティブな期待を持っていた
私は例え誰でも死ぬのを見たくない、という考えを受け入れられないと断じ、実行するのも私だけと断じた
同じように信じていない―ネガティブな期待を持っていたのだ
部長があの時言った"頼れ"は言い換えるならば"信じろ"である
誰も、少なくとも自分は相手のさらけ出した考えを真剣に切り返すかもしれないが、馬鹿にはしないし、無意味に拒絶しない
逆に自分もそうなると信じる事
強みでも弱味でも願いでも、そういうのをさらけ出しても受け入れてくれると信じる
だから頼れば、力を貸してくれる
これが私なりの解釈、私なりの答え
故に私は―
「エリー、私はエリーの持った力はエリーの生まれ持った素晴らしい部分って信じるよ。それに怖いなんて言い方したけど、私の事心配してくれたんだよね。ありがとう」
―私はエリーを信じるのだ
交差する視線
まだ私は、言葉をあまり上手く使えないけど…今の私の気持ちは視線と言葉で真っ直ぐ伝えた