第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
「皆…行くぞぉ!!」
今回指揮するシモンに合わせ、一番の部隊が真っ直ぐ飛び出す
敵の戦法が分からないから何とも言えないが、基本戦術としては懐から飛んで斬るしかなかろう
そんな事を考えている間…ふと、ある事に気付いた
ボスの形である正八面体―その中で最も私達に近い位置の頂点が光っている
あれは一体何だろうか…
少しずつとは言えダメージが入っているのにも何も反応を示さない中で、光だけが増していく
「オイ、キョウヤ…」
「あぁ…ヤバいかも…」
何がヤバいのか、見当のつかない私が部長に聞こうとした時、部長が全員に聞こえるように叫んだ
「離脱しろ!!殺られるぞ!!」
状況を理解する前に一瞬で全部隊が散り散りに別れる
私は身体を動かす前にエリーに引っ張られ、手近なビルの方に行くことになった
その瞬間、同じ通りを光が包み、爆音と共に地面を抉ったのである
「…っぁ!」
光に弾かれた空気に後ろから押し出され、吹き飛び、転がる様に地面を滑る
急に地面に叩かれた衝撃で咳き込むが、どうやら無事らしい
周りを見ると皆もいる
どうやら命はあるようだが…何が起きた…
光が通った先を改めて見ると、コンクリートの地面が溶け、膨大な熱を発している
その先―反対側のビルの影にもシモンを始めとしたプレイヤーがおり、起きた事態に驚愕しているようだった
「マジかよあの野郎クソッタレ…」
大の字から起き上がったシンジ先輩が悪態を吐いている
一体何なのか、てんで分からない私は荒い息を整えるしかなかった
「クソッタレも何も今のがそうだ。あのボス…こっちの攻撃か何かに反応してビームか何か撃ってくる……マジでヤバいって…」
つまり何だ?
ダメージを与えたいなら、あのビーム的な光に耐えるか避けるかしろと?
「無茶苦茶じゃないっスか…それ…」
息を整えがら言うケンタに対して、賛同する
もしそうなら近接戦闘を得意とする武器は、まず太刀打ち出来ないという事になるからだ
そしてあの威力
見た目だけなら良いが、どう見ても危険だ
(そうだ…最初の部隊…)
だとするなら彼等は?
直撃であってもなくても彼等はどうなっているのか、知りたくて彼等の姿を私は探した