第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
「それじゃあ…スタート!」
合図と共にシンジ先輩、ミヤの二人が飛び出す
同時に、同じ方向から出た二人に等分にターゲットが振られるがさして問題ではない
放射状に吐かれる糸をミヤが逆手で放った武器スキルで切り裂いた先をシンジ先輩が、低い姿勢で駆け抜ける
懐に入り、横薙ぎに武器スキルを放つ―がそれを敵は跳躍して回避
「なんの、私はもう一回!」
敵よりも早く跳躍していたミヤが敵の上に構えていた
「どおぉぉりゃっ!!」
両腕と重力、武器スキルを伴った攻撃は見事な具合に敵の身体接合部に命中した
勢い負けした敵は跳躍前の地点に落とされる事となった
そこに続くのはケンタ、そしてユウ
武器スキルを伴った攻撃でユウが敵の身体を跳ね上げる
「おおぉぉぉ!!」
跳ね上げられた事による隙間、そこに入り込んだケンタ
武器スキルを伴い、大きく両手斧を振り、敵右側の足を三本全て刈っていく
その攻撃速度は何だか…今までより少し速くなった気がする
「もういっちょ!!」
勢いのまま反対側も刈る
このままでは倒れた敵に潰れてしまうが、もう一度武器スキルを伴った攻撃を放ったユウにより、敵は大きく吹き飛び壁に激突した
「素振りの甲斐が漸く出たみたいだね、ケン」
「ばっ…おまっ、言うんじゃねぇよ!」
合流した二人、ユウの軽口にケンタが反応する
しかしさっきの言から察するにケンタは素振り…つまり、一人訓練していたという事になる
少しずつ、皆強くなっている
「なら、俺達も負けてられないな」
部長が私の肩に手を置き、口を開く
その目はしっかりと私を見据えている
「はい」
それに私はしっかりと頷き、答える
確かに負けていられない
生き残る事に勝ち負け云々な言い方は当て填まるかは分からないが、皆が強くなる事に対して私も応えなくては、皆に悪い
「行くぞ」
だからこそ私は、次の部長の言に―
「はい!」
―力強く答えるのであった