第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
「アレ?…アレって何ですか?」
一体何の事か、と逆に聞いた私の言にシンジ先輩所か部長、ミヤすら驚いた顔をしていた
どういう事か全く分からない
「お前本当に分からないのか?」
驚愕の表情を崩さぬ皆
更に訳の分からない私は、更に聞かざるを得なかった
「あの…私、左腕をやられた後の事がイマイチ分からなくて…逆に何か教えて欲しいんですけど…」
ここまで言うと部長が私の状態を理解したらしく、またも溜め息と共に口を開いた
「リリィ、お前あの時左腕を飛ばされたろ。その後すぐに撤退したんだが…お前…」
まるで有り得ない物を見た恐怖が残るかのような顔で、少し詰まるように続けた
「左腕が無い状態でボスを倒したんだ。しかも一人で、ボスを圧倒しながら」
「……え?」
私が…倒した?ボスを?一人で?
どういう事だ意味が分からない
しかし、そんな思考とは裏腹にイメージが…嫌が応でも、問答無用だとばかりにイメージが甦る
無くなる左腕、人混み、遠くに見える―死神
「!!」
イメージはそれきりであったが、嫌な汗が止まらない
私に何があった…私はなにをした、どうなった
分からない、分からない、分からない分からない…分かりたくない―
「オイ…オイリリィ!」
自らを抱くが、震えが止まらない
部長が肩を揺するが反応が出来ない
逆に記憶を遡る
あの時…あの時…あの時私は―
「リリィ」
突如別の声―視界が暗くなり、身体が何かに包まれた