第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
空になったお椀はスプーンごと、勝手に消失した
「ご馳走さまでした」
既にそこには何もないが、とりあえずこれだけは言っておく
習慣でもあるし、礼儀でもあるからだ
しかし、ゲームのデータとは言えとりあえず胃に何か入った事による身体的安堵が生まれるのは、何と言うか不思議なシステムと感じるが、まぁツッコミを入れなくても良いだろう
何気無く外を見る
その景色は古いビルが立ち並ぶ景色であった
これが…第七層…
改めて新しい地に辿り着いたのを実感していると同時に、疑問も生まれてくる
今第七層にいるという事は当然、第六層のボスを倒したのだろうが…
「ねぇミヤ…第六層のボスって、誰が倒したの?」
投げ掛けた疑問にミヤは少し驚いているようだった
何故それを聞くのか、答えは一つしかないという顔であるが、私には分からなかった
ボス戦の途中、左腕を失う欠損状態になったのは覚えてる
しかしその後、痛みのあまり意識を手放してしまった筈だ
故に戦闘状況等は今も分からない
その疑問に対して、ミヤはややあってから漸く口を開いた
「あのボスを…倒したのは―」
ゆっくりと紡がれた言葉は突如開いたドアにより遮られた
驚き、何かと思って見ると部長、そしてシンジ先輩であった