第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
「―っ!」
意識が切り替わり、周囲の景色がクリアになる
目の前に見える景色はまた知らない景色―しかし、ここ最近で急に知ったような天井であった
(ここは…?)
回らない私の頭に答えをくれたのは、聞き慣れた声であった
「おはよ、リィちゃん」
「ミヤ…私…」
すぐ近くに窓があるような小さい部屋
陽光に柔らかく照らされた部屋、その窓際にある椅子にミヤが座っていた
「ようこそ第七層へ、って言ってもボス倒したのは…」
そこまで言ったミヤの表情が雲る、がそれはあくまで一瞬で次の瞬間にはもうその様子は消えていた
「まぁ、とりあえずリィちゃん三日くらい寝てたし、何か食べて元気出そ」
三日…それ程私は寝ていたのか
という事は、その間に皆が第七層の中心となる街へ私を運び、看病していたのだろうか
何にせよ、皆には感謝しなくては…
ストレージを探していたミヤは、目的の物を見つけたらしくそれを選択
何を出すのかと思いきや、お粥であった
「料理スキル、始めました~。まぁ、まだ始めたばっかりだしこんなのしか出来ないけど」
「いいよ……ありがとう、ミヤ」
始めたばかりというには、見た目随分と良く出来ている
少し冷めている気がするが、多分私が寝ている間に作ったのだろう
文句は言えない―そもそも言うつもりもないが
お粥と一緒に取り出されたスプーンを用い、ゆっくりと口へ持っていく
「…うん、おいしい」
「ちょっと冷めてるけどね」
「それでもおいしいんだから、自虐しないの」
何だか穏やかさ、というものをやっと取り戻した…という感じを醸しながら、何気無い―他愛ない会話が続いていった