第6章 第1層~第10層 その5 "天才"
ここはどこだろう―
意識と呼べるかどうかも怪しい虚ろさの中に私はいる
その場所は常に夕方、夕陽のある時であった
何故ならそこに彼女がいるからである
何と言うのかも分からない花に覆われたこの土地、前方に意識が向く
そのつもりがあるか無いかは分からないが、私は既にその意識の方向へ進んでいた
風も何も吹かないこの土地の花を揺らして、進んでいく
暫く進み、私は意識の根源を見た
一人の少女である
金の髪、しなやかなれど豊かな肢体そして…彼女の後ろのギロチンが目に入る
「 」
彼女の名前を口にするが、言葉にならない
そして、彼女もまだ目覚めない
彼女を捕らえる枷を解く術を、まだ誰も持たないから
故に誰も何も出来ぬという不変性を感じながら、私の意識は落ちていく
落ちていく―落ちていく―
あぁしかし何故―
(ギロチンなんだろ…)
―それだけをハッキリと感じながら、私は落ちる意識に身を任せた