第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
唐突に起きた事象にその場の誰もが驚き、振り向いた―がその時には次の段階に入っていた
「おおぉぉぉぉ!!」
人混みを掻き分けるのではなく、吹き飛ばして彼女は突き進んだ
その速さは普段彼女がよく使う脚力強化のような速さではあったが、決して彼女はそれを使用した訳ではない
そうであるにも拘わらず彼女は白い旋風の如く、ボスへと向かっていった
「何…アレ…」
その様は普段彼女と仲の良いミヤコを愕然とさせ、彼女を想うエリーにすら何も口にさせぬ程の姿であった
「どけえええぇぇぇ!!」
今リリィはボスと交戦中のプレイヤーを突き飛ばしボスの前へと躍り出た
「お゙お゙ぉぉぉぉ!!」
ボスが彼女を認識する前にボスの身体を正面から斬り裂いた、と言っても彼女に具体的な事は頭に無い
ある事はただ一つ―
死神よ、触れるな―触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな触れるな……
その一念のみで彼女は左半身にある激痛を無視し、叫びを上げながら右手を滅茶苦茶に動かしボスを斬り裂いていく
反撃として繰り出された左腕を自身の元に来る前に五本の指を斬り、更に掌から肩の方向へ切り裂く
周囲のプレイヤーのほぼ全ては彼女を、化け物か何かを見るような目で見ていたが一人だけ、トンファー使いの少年だけがその状況に驚愕以外の感覚―
「……面白いじゃんアイツ…クハハ…」
―面白みを感じていた