第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
「あ…っく…あ゙ぁっ!」
触れる空気が生み出す痛みに襲われる度に膝にかかる力が抜けそうになり、その度に支え直される
自然治癒にはまだかなり時間がある
もしかしたら、無くなった部位に比例するのかもしれない
だとしても、現実ではまず味わう事はない痛みに苛まれるコレは状態異常の中ではかなりえげつない代物だ
尤も今は、胃液が戻って来ないだけマシかもしれないが、今はそれすら気にならない
痛みの中、人混みの先に青い巨大な影
涙に歪んだ視界のお陰で余り良く見えないが、何かを振るっているという大体の動きは理解出来る
アレは…何だったろうか…
巨大な影がまた何かを振るっている
震え、軽く吹き付ける空気が更に左腕があった場所に痛みを生み出し、私を苦しみに喘がせる
(痛…い…)
漸く絞り出した言葉も、音にならない
しかし、一度溢れた言葉は音に成らずとも流れを止めない
(痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い…)
そして極限の様に感じられる痛みは私に一つの事象―死を、思い起こさせる
(死ぬ…死ぬ…死ぬ?……嫌、死にたくない…死にたくない…)
そして眼前―人混みの先の青い影が迫っている
そうだ…アレは…
アレは…死をもたらす
アレは…アレは…!
(――死神だ)
その時私の中で、何かが"嵌まった"