第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
着地体勢など全く取れず、無様に地を転がった
フードが外れ、頭部が全て晒されるがどうにもならなかった
止まった瞬間に、左半身に激痛が走ったのだから
「あ゙っ!…ゔ!」
見ると左腕が無い
混乱のまま私はHPバーに見慣れないアイコンが入ったのを見付ける
状態異常…情報にあった欠損状態だろう
空気か何かにもぎ取られたような、肩口が痛々しく赤いエフェクトを放っている
「ぐ…っ…ぎぃっ…!はぁ…はぁ…」
あまりの痛みは涙を流させど、叫びを上げさせなかった
短く枯れたような吐息が歯を食い縛っても口から漏れ出す
「リリィ!!」
急いで後退した部長達がかすかに見える
視界は涙に歪み、痛みで焦点が合わない
誰だろうか、肩に預けられ私達は後退―部隊切り替えとなった
一番後ろに着いたのだろう、移動と思しき足の擦れが止まった直後、力を入れられない私は倒れ込みそうなのをまた誰かに支えられた
顔が近くに見える、ミヤだ
歪む視界に見える彼女は顔の色を青くしていた
「リィちゃん…リィちゃん…」
状態異常は時間経過で治る
とは言え、現実にしてみれば残酷な状態だ
そして私達には、今これに対する手段を持たない
部長やシンジ先輩が他の部隊のプレイヤーを色々回っているのだが、私の知る所ではなかった