第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
基本戦術は同じ―
同じフォーメーションでボスに対してはいける筈
ただ、唯一違うのは…
「邪魔だ!!」
両手剣を避けたついでで、こちらに攻撃を仕掛けてくるトンファー男が半分敵として機能している事
向こうが今こちらを敵として認識している為、その攻撃には容赦が無い
だからこそやられる訳にはいかない
私は一人、方向転換―トンファー男と正面から対する形となった
激しくぶつかるトンファーと剣―私にとって始めての人間とのであるが、そこに何かを思う余裕はない
「くっ…ぅぅ…」
鍔迫り合いではあるが、私と彼では現状ステータスに差がある
それは決定的な差である故、徐々に私が押されていく
私を追い詰める男の目は本気の目、殺す事も厭わない目
「だから…どうした…」
腕の筋肉が悲鳴を上げる中、絞り出るように漏れた声―それは私の願い
「ここで死ぬかぁ!ましてやアンタみたいな……ケダモノがぁ!!」
腕力と脚力にブースト、身体にあるバネというバネを使い、重くかかっていたトンファーを弾く
勢いを消しきれず、私は体勢を崩す
一瞬フラついた私を見逃さず、もう一度トンファーが襲い掛かる
でも避けるつもりは無い
あの子の援護が間に合うから―
「ケダモノって嫌い」
その言葉と共に遠方からエリーの矢がトンファー男の邪魔に入る
一度に放たれた矢は三本―その全てを彼は距離を取る事で避ける
流れ弾…いや、流れ矢がボスにダメージを与えているがそこを気にする余裕はない
「三人目だオルァ!!」
彼の後ろからケンタ―当たれば頭が割れる一撃を放つが本人は当たるとは思っていない
予測通り彼の放った一撃は見られもせず、頭越しに添えた片方のトンファーで抑えられた
しかし知った事ではない
私が正面から袈裟斬り―これももう片方のトンファーで抑えられる