第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
何かと思い振り向いたが、当の本人は黙っている
「あの…エリー?」
改めて聞き直した直後彼女は背伸びをし、私の顔を横から潰してきた
「うぶっ…」
フード越しに顔を潰され、間抜けな声が口から漏れる
一体どういう意図だろうか
そう感じていると、ゆっくりとエリーは口を開いた
「…考えすぎ」
短く言われた言葉に私は何か刺さる物を感じた
まさか何を考えていたかバレたのだろうか
「リリィ分かりやすい」
さいですか
そのままエリーは顔を抑える手を離した
しかし視線はまだ、フードの下にある私の顔だ
「私も言い出せなかった、ちょっと悪いとは思う…でもそう思うなら、戦う。誰も犠牲にならないように勝ちに導けば文句無い」
出した言葉は至極単純であった
理屈はすぐに理解出来る
まるで、テスターに対するカミナの答えのような単純さであった
まぁ…そうかもしれない
言うも言わぬも悪くなるなら、どちらであってもせめて結果が多く生きていてあれば…それも全員なら勝ち
結果ありきの阿呆らしい考えだ
「でも、やれば何かなる。私達なんてそんなに凄くないから…この程度で良い」
エリーにしては長い発言
意外にも感じられた言葉は、更に意外な形で締め括られた
「因みに私はリリィの変顔見れたから、リリィ許す」
「………さいですか」
溜め息を吐きながら、エリーの言葉を反芻する
色々思うが、今はやれる事をやっておけ―そういう事だろうか
生きるには苦しい事がある
それは仕方ないから、せめて後悔ないようにしろと―言葉足らずだろうが、私の中でそう纏める事にした