第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
その後、もう一度私達の出番が回ってきた
動きは変わらない、鞭を抑えながら身体と玉を狙う
ただ、気持ちの分キレが違うだろうか
私からしてみれば、そんなに変わっていないがどうだろう
視界外から私に襲い掛かった鞭を片方、払う
もう片方はエリーが矢で弾く
「ん…そのまま、やってこ」
後ろからかすかに、しかしハッキリと聞こえた声にまずは応えたい
もう一度私に来る鞭に正面から向かう
剣を左腰側に持っていき、低く構える
鞭を見ながら静かに、静かに呼吸
思い付いた手順を実行する為、落ち着かせる
最近、あの両手剣男やトンファー男を見ていて分かったのだが、武器スキルによる攻撃の際にブーストスキルをかけると、ブーストの分だけ攻撃が強化される
ここからは私の推測と拙い経験からの勘だが、武器スキル使用時に技に見合った動きを的確に入れる事により、技始めが早まり、効果が増大する
それをこれから、土壇場に近いがそれを試す
最低二種類のスキル、それらの同時使用
「……せっ!!」
横薙ぎに振るった剣が放ったのは高速で直進する風の刃―通称、鎌鼬である
刃は鞭を切り裂き、玉近くの身体に命中―多少ボスを怯ませる事となった
及第点…は充分越えている
原理は違うとはいえ、まさか自然現象をそれこそゲーム的かつ人為的に起こす事が出来るとは…
自分でやっておきながら驚きがまず表れる
直後、次への切り替え
後方へ下がった後は、どうやら鞭を多少なり切れたのが効いたらしく先程よりも戦い安くなったようだ
「…こんな感じ?」
視線はボスから変えず、しかしハッキリと私を押した声の主に話しかける
「ん」
短い答え
相変わらず私は視線を変えていない為、彼女の表情は読めないが、まぁ…満足してはいるだろう
などと考えている内にボスはシモン率いる部隊に倒され、ここに第五層はクリアされたのである