第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
その後、私達の番は二回程回って来た
鞭は使われているものの、決して驚異ではないし、集中を切らさなければボスとは言え大した事は無い
だが、ボス戦前から続く私の不安感は何となく拭えない
頭は切り替わっている
判断も衰えた訳ではない
しかし、気持ちの部分にこびりついている
この不安感…いや、罪悪感とも言うべきか
本当に、ネリーの情報の件を言わなくて良いのか
浮かぶ光景―それは言う言わぬも修羅場
正直、良いとは言えない
ならば言わぬ方が…と考えるのが人間である
そして私も人間である故、先程それを選択し今も…これからもそうしようとしている
(嫌な人かも…)
そんな考えもよぎるが、本当にそうなりたくはないから、頭を切り替える
落ち着け…ゆっくり考えろ…
多分言わなかった事はある種の罪に該当するかもしれない
部長以下他の面子やネリー本人にも言える可能性はあるが、今は置いておく
これでもし、死者が増えるのならどうする?
いつかのトンファー男の言った"実力と運が無かっただけ"なんて思いたくない
じゃあ私は…私はどうする?
纏まらない考えが頭を回り続ける
纏まらない所か、広がり続けて訳が分からない
「リリィ」
三順目となる一番目の部隊へと切り替えた後、唐突にエリーが口を開いた