第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
迷宮区―私達からしてみればボス戦の際に全員で通る道、という程度でまだここで鍛えようとか、そういう意見は一回も出なかった
だから現状私達は、例えて言うなら意図せず未開の地に足を踏み入れてしまったようなもので、困惑せざるを得なかった
「なるほど、あの神社がここに来る鍵みたいなものだったんだ」
冷静に見解を述べるユウ
全く状況が解決した訳ではないが、経緯が少しでも分かれば多少は落ち着ける
むしろ落ち着かなければ死に直結する
しかし、敵はどうやら今の区画には来ないようで少し息を整えられた
改めて、周りを見る
意匠や雰囲気はこれまでの層と変わっていない
この迷宮区、上層にボス部屋はあるもののそれに辿り着くまでに何階登れば良いのかは微妙に違っている
更に敵の出現率が少し高めである
故に目の前の群体を全滅させる気持ちでいると、いつまでも戦闘が終わらず少し辛いかもしれない
どうするか迷っていると、部長が口を開いた
「せっかくって言い方も変だけど、この際だ。皆でこの迷宮区、探索しないか?」
迷宮区の探索―それは私達にとって初の出来事ではあるが、同時にいつか通るべき道だろう
「明確な目標と撤退のタイミングを誤らなければ、生きていける筈だ…俺達七人なら、やれる」
私達ならば、出来る
今はまだ不確定で、根拠もないようなこの言葉を私達は信じて、迷宮区の更に奥へと進んでいく事にした