第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
暫く洞穴エリアをさ迷った結果―
私達はフィールドとなっている山の頂上付近に出たのである
頂上と言っても、雲海を見下ろすとかそういうのは一切無く単に遠くに街が見える程度である
「でもこれはこれで絶景でしょ」
そういうミヤには賛同してしまう
一応苦労して登った事にはなるし、ここまで間違いなく命をかけている故、ある種の達成感の類は生まれてくる
一応フィールド自体は続いているので、私達は探索を続ける事にした
頂上付近に出たからと言って頂上に着いた訳ではない
往々にしてこういう場合、頂上には何かあるというのがテンプレだ
そしてここも、そのテンプレを守るかのように建造物が設置されていた
重なった岩の上に小さく朱色をした縦横四本の柱、そしてそれと同じくらいの大きさの建物
建造物と言うには少々小さいが、これは間違いなく―
「神社だな」
神社、社の類である
日本を基準に考えれば、こういう要所っぽい部分に神社の類があるのは決して変な事ではない
製作者である藤井氏もこのような部分には長けているのか、と考えさせられるのは何となく妙な気分だが
「せっかくだし、お参りしないか?」
唐突に発せられた部長の提案
決して否定する要素はない
むしろ、願掛けとしては丁度良いだろう
七人が小さな社に向かう
社自体は小さく、七人が綺麗に並ぶと平気で横に溢れる具合だ
それでも関係ない、必要なのは気概だ
二礼、二拍手―ここで静かに祈りを捧げる
私の願い…それは至極単純で、それ故最も単純な論理で片付けられる為、実現の難しいもの
(皆が生きていられるように…その為に、まず私が生きていられるように…)
一礼―気持ちも落ち着き、祈祷が終わったかと思いきやそうではなかった
祈祷が終わった直後、私達七人が同時に光に包まれ転移したのである
本当に急に起きた為、全く反応出来なかった程自然に転移させられた
しかも周りを見回すと―薄暗い、少し閉塞感のある場所
「まさか…迷宮区…?」
そのまさか、私達七人は山の頂上にある社から迷宮区に転移したのである