第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
第五層―
シアーノという名の街を中央にしたこの層は山と川に彩られた片田舎…という雰囲気の街だ
一昔前―私のあまり知らない昭和という時代のイメージを表している
この街も気を抜けば、家に帰るノリになってしまいそうになるが残念ながらそうはいかない
先の第三層と同じく、ここはまだゲームだ
その前提を忘れてはならない
この層のフィールドである山を進みながら、それを考えている
時折現れる蟻―と言っても通常の何百倍、まさにモンスターサイズであるが―をいなしながら最初のフィールドである山の森を通り、次のフィールドである洞穴エリアに足を進めていた…のだが、思うように行かなかった
この層に入り、本来テスターである部長が道に迷うという事案が発生
製品版に伴うアップデートがフィールドに出たかとも考えたが、理由は簡単―試作版の時に部長がこの層以上にあまり出入りしておらず、記憶していないというものであった
「一回だけここ来たんだけど…フィールドのモンスターから有り得ないくらい強くて、鍛えてたら試作版サービス終わっちゃんだ」
とは部長の言である
しかしながら、そろそろ私達もある程度は慣れを見せているし、探索だとかそういう方面でも部長に頼りっぱなしは悪いだろうという結論に至り、以降は気にしない事にした
大体考えてみればシモンやセガール等の非テスタープレイヤーにしてみれば道が分からないまま進むというのは普通の事で、私達の本来のプレイスタイルの筈だ
多少の慣れくらいで調子に乗るつもりはないが、やれるようになって損はない
故に私達は洞穴エリア内の別れ道ををどちらに進んだという事だけ覚えて、後は適当に探索するのであった