第5章 第1層~第10層 その4 "ここまで"
第四層―
パルムという名の街を中心としたこの層は緑豊かな森に囲まれた穏やかな雰囲気の層である
その四層ボス戦
赤く硬そうな鱗に包まれた西洋竜、ディ・ラガンがボスである
巨体を活かした突進や竜にありがちな炎を口から吐いたりしたこのボスであるが―
「ハハハハ!クハハハハハ!!」
一人のプレイヤーに蹂躙されていた
あのテスター、トンファー使いの男である
ボス戦の途中で何処からともなく現れて、ボスを自分の獲物と言い、ボスの攻撃を誘導し私達他のプレイヤーが入らないよう地味に牽制をしてる辺りタチの悪い奴としか言いようがない
「良い!良いぞ!お前とやってるのは楽しい!!」
そりゃ勝ってりゃ誰だって楽しいだろう、というツッコミを心に仕舞いつつ、戦闘を見守る
事実今はそれが最善策であった
ボスが動きを変えた
一対の羽を大きく動かしている―飛翔するつもりだ
始め、私達はこの情報を知らずに戦っていた為、この行動に大きく困る羽目となったが、彼にはどうでも良かったようだ
「待てや逃げんなよ!!」
満面の笑みと全力疾走
それで飛び立った瞬間のボスの足に掴まる
この男、悉く予想外の真似をする
空中であるにも拘わらず彼はボスの足を登り、容易く背中に辿り着いてしまった
一見すると、彼がボスを操っていそうな構図ではあるが、ボスはあくまで彼の獲物だ
「オラオラ、どうしたどうしたぁ!!抵抗してみろやぁ!!」
背中から何発もトンファーで攻撃を叩き込まれ、ボスも空中で暴れる
足場が不安定な筈なのに、彼は全く落ちる気配がない
それどころか自ら跳んだ
着点は―首
「抵抗すんじゃねぇよ!!」
抵抗してみろと言った直後これである
武器スキルを伴った攻撃はボスの首に当たり、ボスが無様に落下するという図を引き起こした
そしてボスはそのままHPが無くなり、砕け散った
「あぁ…楽しかった」
景色が元の迷宮区に戻る際、満足そうに彼は呟き、そのまま先へ進んでいった
ここに第四層は、あの男によってクリアされたのである