第1章 ここから始まる物語[R18]
総悟と名乗る青年の毒舌は半端なかった。
散々“天パ”と罵られた坂田さんの額には青筋が浮かんでいる。マジでブチ切れする五秒前だ。
「ところで旦那、その女ここらじゃ見ない顔だが何処の遊女なんですかィ?」
コロリと話題を変えた青年はそう言って私に視線を向けた。
その顔は端正と言う他、言葉が見つからない。イケメンという言葉を具現化したような顔立ちだ。
「…こいつはそういうんじゃねェよ。俺の客だ」
「へェ、俺はてっきり何処ぞの手練手管かと」
「失礼な物言いするなや。確かに一見吉原の女っぽいが本当は…あれ、そういえば何なのお前」
坂田さん、あんたが一番失礼だわ。
そう言い掛けたがシバき回されそうだったのでやめておいた。
『何なのって…父が営む診療所で看護s』
「「ナースだと?」」
『いやどんだけ食い気味⁉︎』
私の職を聞いた途端、目の色を変えた二人。まるで肉食獣のような瞳でこちらを見つめている。
「旦那、この女俺に貸してくだせェ」
「断固として断る。白衣の天使は俺だけのモンだ」
「小一時間でいいから、チャチャッと済ますから」
「尚のこと駄目だわ!寝言は寝て言いやがれくそガキ‼︎」
「 …チッ」
雄同士の争いに負けた獣は小さく舌打ちをすると、考え深げな面持ちで黙り込んだ。
なんか嫌な予感がする。
むしろ嫌な予感しかしない。
しかし、次に青年から出た言葉は拍子抜けするほど淡白なものだった。
「まァ、旦那がそんなに入れ込んでるなら仕方ねェや。リアルナースプレイは諦めるとしまさァ」
とか何とか言いながら去ろうとする青年。彼が去り際に残した単語の意味を、私は知らない。
「旦那…NTRはお好きですかィ?」