第1章 ここから始まる物語[R18]
昼下がりの情事をパジャマ姿の少女に…名は神楽というらしい、見られてしまった私達は限定生産の高級酢昆布とやらを買いに行くため大路を歩いていた。
さすがは大都会、お江戸。
立ち並ぶ高層ビルに空いた口が塞がらない。
「お、銀さんじゃねェか!」
「別嬪さん侍らせてアンタも憎いねえ!」
道行く人が次々に声を掛けてくる。
人の良さそうなオバちゃんから強面のチンピラまで、その人種は様々だ。
『坂田さんって…一体何者?』
ヒト一人分開けた距離から私は問うた。
「そうさなァ」と軽い相槌を打つ坂田さんは顎に手を当てて空を仰いでいる。
「ある時はカリスマ店主、またある時はイケメンなお侍さん。然してその実体は…愛の戦士!キューティクル銀さんさ‼︎」
『…え、ちょっと良く聞こえなかったんでもう一回いいですか』
「聞けやァァァ!やらない、もう絶対やらない!ハートが傷ついちゃうから、チュクチュクしちゃうから‼︎」
坂田さんが本日二度目のスベリ芸を披露している時、前方から黒服の青年が歩いてくるのが見えた。
漆黒の生地に黄線の刺繍…時折ニュースの一面を飾っている“真選組”の隊服だ。
「こりゃ珍しいや、旦那が偉く上玉な女連れてらァ」
栗毛の青年は耳にはめたイヤホンを外しながら言った。
かの有名な真選組にまで知り合いがいるなんて、本当に坂田さんって何者なんだろう。
「おー…総一郎くんじゃねェか」
「総悟です旦那」
「今日も元気に悪者しょっ引いてるか?総次郎くん」
「総悟だっつってんだろ天パ野郎」
完全に私を置いてけぼりにして痴話喧嘩をする二人。毒舌警察官と銀髪の小競り合いはこの後しばらく続いた。