第1章 ここから始まる物語[R18]
「気に入ったから」
『……は?』
一瞬、坂田さんが何を言っているのか分からなかった。
私は電池の切れたカラクリのように動きを止めて真紅の瞳を見つめ返す。
「お前の事が気に入ったって言ってんだよ。分からねェなら体で教えてやろうか?」
『か、体…!⁉︎』
悪どい笑みを口に浮かべて私の肩を抱いた坂田さんの腕は思った以上に逞しかった。
香水だろうか。
異国の菓子のような甘い匂いがする。
『え、ちょ…いや…』
このままでは襲われる。
初対面の怪しい銀髪に手篭めにされてしまう。
フル回転の脳味噌が警鐘を鳴らしているのに体が言う事を聞かない。妖しく光る赤眼に捕まって身動きが取れないのだ。
「へェ…嫌がらないんだ」
言いながら坂田さんは私の顔を覗き込む。
その息が上がっているように感じるのは気のせいだろうか。
『いや、別にそういう訳じゃ…っ』
そう言い掛けた時だった。
突如として息が出来なくなった私は頭が真っ白になる。キスされたのだと気づいた時には既に口内を犯されていた。
『……んっ…‼︎』
熱を帯びた舌が私のそれに絡み付く。
いやらしい音が耳に響いて変になりそうだ。
「見れば見るほどイイなお前…マジで気に入ったぜ」