第1章 ここから始まる物語[R18]
『こっ…ここで働くんですか⁉︎』
私は驚きのあまり声が裏返ってしまった。
坂田さんの出した条件とは別離代行依頼を受ける報酬として私自身を差し出すことだったのだ。
「な、何言ってるんですかアンタは!糖分の取り過ぎで頭ヤられたんですか⁉︎」
店主の突拍子もない発言に眼鏡君は焦りまくっていた。
眼鏡が冷や汗でずり落ちていてちょっとアレな感じだ。
「るせーな…子供は黙ってろ。お父さん今大事な会議中なんだから」
「一方的な不平等条約結ぼうとしてるだけでしょうが!それに僕は貴方のような父を持った覚えはありません‼︎」
「だァァ!ピーチクパーチク口煩え眼鏡だな!お前アレだ、ゲーセンでも行って来い30円やるから。そして二度と帰って来るな」
「銀さん、今時30円じゃオモチャの車にも乗れないです」
「いいからとっとと行けや!」
眼鏡君はなんやかんや文句を言いながらもしっかり30円を握り締めて出て行った。
厄介払いに成功した坂田さんはおもむろに立ち上がると私の隣に腰掛ける。その距離はホストクラブのそれよりもよっぽど近い。
『え…えっと、その、何か近くないですか?』
吐息が掛かる程の近距離に私の心臓は張り裂けそうだ。全身の筋肉が緊張で硬直している。
「そうか?普通だろ」
違う。
絶対普通じゃない。
そう思ったが何だか怖かったのでツッコまないでおいた。
「で、返事は」
近くで見る坂田さんの肌はまるで人形のようにキメが細かかった。髪にしろ瞳しろ全体的に色素が薄くて儚げな印象だ。
中身はむしろ荒々しい位だけど。
『い、いや…そんないきなり働けと言われても…そもそも何でそんなこと言うんですか?』
私はドギマギと伝える。
次の瞬間、坂田さんの口から出てきたのはあまりにも予想外な言葉だった。