第3章 SPARKIN’![R18]
『…お待ち下さいませ!』
私の呼び掛けに足を止める隻眼の侍。
見返り美人という言葉がぴったりな横顔が「何だ?」と低く答えている。
『せめて…せめて、お名前をっ』
必死だった。
自分でも理由は分からない。
ただ、何か言いたくて。
どうしても“金色蝶の君”に振り向いて欲しいと思った。
まるで引力のように私を惹き付ける、この気持ちに名前をつけるとするなら…それは。
「ククッ…俺に惚れたかい?」
『……っ‼︎』
銀さんの事が頭を過ぎらない訳じゃない。
ただ、考えてみれば銀さんに「付き合ってくれ」と言われた覚えもない。噂だけが独り歩きをして“万事屋の女”と呼ばれて居ただけだ。
こんな都合のいい事を考えさせてしまう程、このお侍様には女を狂わす魅力があった。
「名乗る程のモンじゃねェ…俺の事なんぞ火傷しない内に忘れるこった」
『そんな…っ』
「…また会えるさ、運命で繋がってりゃな。もしもう一度巡り会えたならその時は…お前さんを俺の物にしてやるよ」
ズキューン
可笑しな効果音が脳内に鳴り響く。
恥ずかしい。
あまりにもキザな中二っぽい台詞。
なのに…なのに……!