第1章 ここから始まる物語[R18]
「別離代行だァ?」
自らを坂田銀時と名乗った銀髪の男性はこの上なく不機嫌な声を出した。
週に一度発売されている少年誌から視線を離して私を睨み付けている。
“万事屋銀ちゃん”の噂を聞いて病弱な姉の代わりに江戸までやって来たけど…
何、この怖い人。
店主が傾奇者だなんて聞いてないよ。
『ええ…私の姉上が元彼にしつこく付きまとわれて困ってるんです。姉を諦めるようその男を説得してくれませんか?』
「…んなもん警察に相談しろよ」
『しましたよ。でも犯罪性が無いとかで取り合ってもらえなかったんです』
他人の色恋沙汰を兎角嫌っている様子の坂田さんはどうにかして依頼を取り下げさせようと必死だ。
そこに眼鏡の少年が割って入る。
少年は丁寧な手付きでお茶を差し出してくれた。
「…引き受けてあげましょうよ。美人のお願いは買ってでも受けろってよく言うでしょ」
「言わねェよ。つーか何処でそんな言葉覚えて来るんだマセガキ眼鏡」
「銀さん、眼鏡は余計です」
眼鏡君の言葉を受けた坂田さんは深い溜息をひとつ吐くとこんな事を口にした。
「ったくしょうがねーな…オイ嬢ちゃん、依頼は引き受けてやるがその代わりに条件がある」
『…じ、条件ですか?』
私は突然の提案に素っ頓狂な声を出す。
低い声で凄む坂田さんはまるでヤ◯ザだ。
いや、むしろ本物の方なんじゃないだろうか…なんだか先行き不安だな。