第2章 欲しがる男達[R18]
あくる日の事だ。
寝起き早々…と言ってももう昼過ぎだけど、居間に静々と入ってきた銀さんは私の足元に膝を付いて頭を下げた。
そりゃあもう、凄い勢いで。
「本っ当に…!すんませんっしたァァァ‼︎」
私は『え?』と小さく返しながら首を傾げる。
手には一枚の皿。
乗っているのは三段重ねのパンケーキだ。
昨日の一件の後で顔が合わせ辛かったし、甘党店主のご機嫌伺いにと作ってみたのである。
「酒の勢いとは言え惚れた女に俺はなんつー事を…姐さん、こいつで勘弁してつかァさい…‼︎」
とかなんとか言いながら短刀を取り出す銀さん。柄であろう部分には白い紙が巻かれている。
え、それ切腹用のソレですよね。
『タァァァイム!一体何をしようとしてるんですかあんたは!』
「この命を持って詫び入れしようかと」
『重い、重いよ銀さん!お前の愛は横綱級か‼︎』
「…オイ!黙って聞いてりゃお前、失礼にも程があるだろうが!それに俺の愛はアンドレ・ザ・ジャイアント級だ‼︎」
『どっちにしろ重いわボケがァァ!』
ほかほかのパンケーキを挟んで痴話喧嘩を繰り広げる私達。
一方、店主用の机にもたれ掛かる定春の傍らには昨晩のくノ一が簀巻きにされて転がっていた。トレードマークの赤眼鏡を神楽に取り上げられている。
「ああっ!こんな風に私を縛り上げておいて何処も弄ってくれないなんて…!イイわ、こういうの凄い興奮する。もっと私を感じさせて銀さァァァん‼︎」
定春相手に身をクネクネ捩るくノ一。
相変わらず氷のような目で神楽は部屋を見渡した。
「…馬鹿ばっかアル」
「ワンッ」