第10章 最期に贈る言葉
『あー……これ?』
「遠くにお参りでも行ったのかい」
『ううん。遊園地のお化け屋敷で配ってるやつだよ、ただのお飾り』
「へェ、何でまた大層大事そうに持ってるんで?」
『……それはね』
貴女はおもむろに御守りを首から外すと掌に乗せて昔話を語り出した。
長いようで、あっという間に駆け抜けて行った。五年前の幸せだった日々を。
「……そうかい。なんか、悪いこと聞いちまったな」
事の経緯を知ったマスターは申し訳なさそうに新しいグラスを差し出した。
対する貴女は事も無げに返す。
『平気。最近、悲しみもだいぶ落ち着いてきたから』