第2章 欲しがる男達[R18]
「お前、名は?」
咥えたままの煙草に目を細めてそう問うた隊士の声は低く掠れていた。
『貴女…です』
おずおずと名乗れば「へェ…」と素っ気ない返事が返って来る。
「お前が万事屋のね…こりゃ隊士共が騒ぐわけだ」
『ぎ、銀さんをご存知なんですか?』
まただ。
銀さんって本当に顔が広いんだな。マジで何者なんだろう…もしかして、かぶき町の帝王とか?
そんな考えに没頭していると今度は黒髪の隊士が名乗りを上げる。
「真選組副長、土方十四郎…俺の名だ。今すぐ覚えろ」
『はっ…え?どうして?』
「こう名乗った方がお前の印象に残るだろ」
『そ、そう…ですね、はは』
相も変わらず瞳孔が開きっぱなしの土方さんは短くなった煙草を揉み消すと、ソーイングセットを片付けていた私の手を取った。
きっと毎日刀を振っているのだろう。
熱を持った掌は固く豆だらけだ。
『え…っと、何か…?』
「勿体無ェな」
『へ?』
「あの馬鹿の女にしとくにゃ勿体無えって言ったんだ」
『!?』
土方さんは私の手を取ったまま立ち上がると、そのまま間合いを詰めて口付けてきた。
突然のキスに驚いた私は思わず後退る。
ドンッ
『…っ』
私は壁に背を預ける形で土方さんと向かい合った。その鋭い眼差しのせいか、心臓がギュッと締め付けられたように痛い。