第8章 宇宙を駆ける兎[R18]
少年は血の臭いがした。
こうして肌を寄せるまで気付かなかったが、それはまるで彼自身に染み付いているようで。
看護師という立場上、嗅ぎなれたモノではあったけど……この少年の場合は何かが違う。
ツンとした鉄っぽさ。
生物を感じさせる臭気。
その中に、明らかに混ざっているのだ。
『(……死臭がする)』
歳の頃にして10代そこそこの少年から香っていい物ではない。
これは死期の近付いた老人や病人から臭う代物だ。
どうやら、これでハッキリした。
私が声を掛けたのは途轍もなく危険な男だったらしい。