第2章 欲しがる男達[R18]
「…何見てやがる。見世物じゃねェぞ」
『あ、いや…ごめんなさい…っ』
黒髪の隊士は完全に瞳孔が開いていた。
獰猛な鳥類にも似たその瞳に恐れを成した私は慌てて目を逸らして階段を駆け上がる。
事件は、その数時間後に起きた。
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「あざーしたー」
覇気のない店員の声を背中に受けてコンビニを後にする。
私は例によって神楽の指示により酢昆布を買いに来ていた。彼女曰く「お前は私の舎弟アル」らしい。
年端も行かぬ少女に真っ昼間の情事を見せてしまった罪は重い。
『…寒っ』
外に出ると風が冷たかった。
カレンダーは初夏に突入しているがまだ夜は冷えるようだ。
肌寒さに身を震わせていた、その時。
「汚らわしき幕府の犬め!」
「我が刃の前に散れェェェ‼︎」
突如として耳に飛び込んできたのは男達の怒声と金属がぶつかり合う轟音。
驚いて音の原因に目を凝らすと暗闇に数人の人影が見えた。
ギィィン…ッ!
重い金属音の正体が刀身のぶつかり合うそれだと気付いた私は、初めて見る生の斬り合いに肝を冷やす。
「ぐあァァッ‼︎」
「む、無念…!」
ひとり。
また、ひとり。
目にも留まらぬ速さで人が倒れていく。
その中心で血飛沫を浴びているのは…見覚えのある真選組の男だった。