第3章 三日月。
仮に彼女の前に
別の誰かが現れて、
彼女を奪い去ろうとしても
僕は絶対に彼女を離さない。
心の中が暖かくなって
もう寂しくない。
僕はそう思った。
「さぁ、帰りましょう。送ります。」
僕は彼女に手を差し出す。
「うん。」
彼女が嬉しそうに手を握る。
前に進もうとすると
彼女が立ち止まる。
「?」
僕が振り返ると、
彼女は笑った。
「ゆっくり歩こう。すぐに家に着いちゃう。」
「・・・はい。」
そして僕達はゆっくりと歩きはじめた。
「私ね、月って自分で光ってるんだと思ってたの。」
彼女が少し欠けた月を見上げながら呟いた。
僕も月を見上げる。
「太陽の光が当たって光って見えるんですよね。」
僕がそういうと、
彼女は頷いた。
「私、影ってあんまり好きじゃなかった。」
「・・・?」
「でもね、影があるから月ってあんなにキレイな形になるんだよね。」
「…三日月…ですか?」
「そう。三日月。」