第3章 三日月。
「あの…あのね…」
私は彼がどこにも行かないように
手を掴んだ。
言いたい事はたくさんあるのに、
言葉にならない。
溢れる涙が止まらなくて、
きっと今の私は
ものすごくひどい顔をしていると思う。
「…っぷ。ふふふ。」
不意に黒子くんが笑い出す。
「…え!?」
「いえ、すいません。なんだか…嬉しくて…。」
黒子くんはそう言って下を向いた。
「家の前で別れたあの瞬間で…最後だと思っていました。だから、追いかけて来てくれて…嬉しかったんです。」
「橋本さん。僕は君の事…今でも好きです。」
彼は真っ直ぐに私を見た。
「諦めようと思いました。僕じゃ君を幸せには出来ないから。…でも、やっぱり好きなんです。」
彼の目から
涙が溢れる。
「胸が苦しいんです。どうしていいかわからなくて…」
彼の声が震える。
「わかってるんです。諦めなきゃって…でも、無意識に君を探してしまう。辛いんです。」
「…っ。」
私は彼を
強く強く
抱きしめた。
「!!!」
ほんの少しだけ私より
背が高いだけの彼は…
思ったよりもがっしりしていた。