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三日月。☆黒子のバスケ

第2章 重なる光。~僕編~


「…あの?」

僕が困ったように桃井さんを見ると、
彼女は少しだけ寂しそうな顔をした。

「もう。テツくん無理しすぎです。」

「…え?」

桃井さんは大きく溜息をつき、
背伸びをした。

「敵わないなぁ。美海ちゃんには…。」

「…。」

桃井さんは僕をじっと見た。

「ねぇ、テツくん。私にはね好きな人が居るの。でも、その人は私じゃない誰かを見てた。」

「…。」

「でも、私の事見てくれればーって!頑張ってみたけど、私気付いちゃったんです。」

「…?」

「私が大好きなその人の表情はいつだって彼女に向けられた物だった。だから、私はその表情を正面から見る事が出来ないの。」

その言葉に
僕自身も心当たりがあった。

「でね、私の好きな人が、今、きっと無理をしてる。その表情が私には辛くてたまらないんです。でも、気持ちが分かるからこそ…何もできないんです。」

そう言って桃井さんはニコっと笑った。

「っさ!今日は楽しみましょっ☆あ!お化け屋敷!行きましょ!」

「…はい。」

そうして、僕達は
いろんなアトラクションに向かった。

時間はあっと言う間に過ぎた。
僕は、橋本さんと青峰くんの行方が気になりつつも
気にしないふりをしていた。

空を見上げると、
茜色に染まっていた。

"当園は後30分を持って閉園させていただきます。"

そのアナウンスに
僕と桃井さんは目を見合わせた。

「ねぇ、テツくん。一つだけお節介言ってもいいですか?」

「…なんですか?」

桃井さんは静かに深呼吸した。

「美海ちゃんの事、諦めちゃダメです。頑張ってください。」

「…はい。」

僕は背中を押され、
走り出した。

丁度観覧車の前から右側に向かい走りだした。

空を見上げると、
先程より少し暗くなり始め、
星がきらめきはじめていた。

観覧車にライトが灯る。






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