第1章 重ねた影。~私編~
その後、私は『ごめん。』と一言謝った。
黒子くんも『はい。』とだけ返事をすると、
私達は帰路についた。
でも、それ以降、
私と黒子くんはよく話すようになった。
相変わらず部活中は青峰くんばかり見てしまうけど、
試合中にふと黒子くんを見つけると
嬉しくなる自分が居た。
相変わらず、
青峰くんと桃井さんが話しているところを見ると、
胸がズキズキと痛むけど
黒子くんと関わるようになってから
少しだけど…痛みが減った気がした。
青峰くんのこと
諦められるんじゃないかって…
心のどこかで思っていた。
それから、
何度か私は黒子くんと二人で遊んだ。
二人でクレープを食べたり、
二人でゲーセンで遊んだり、
二人で買い物をしたり…
恋人同士のようで
とても楽しくて…
でも、気がつけば私はいつだって…
これが青峰くんだったらって
黒子くんに青峰くんを重ねて見ていた…。
手を繋ぎながら歩く帰路。
「今度は遊園地に行きましょう。」
黒子くんが私の目を見て言う。
「うん!えーっと…いつが暇?」
「橋本さんが都合の良い日でいいですよ。」
黒子くんは優しく笑う。
「あ!じゃぁ、次の開校記念日とかは?部活も休みだし!」
私の提案に黒子くんは優しく頷いた。
日は暮れ始め、
空は青から赤へときれいなグラデーションを見せていた。
昼の生暖かい風から
少し肌寒い風へと変化していく。
近所の公園の小さな石段。
そこにひょいっと黒子くんが登った。
私はいつもより少し高くなった
黒子くんを見上げた。
「…あ。」
私は思わず胸が高鳴った。