第1章 重ねた影。~私編~
「あ。待ってください。」
突然背後からする声に思わずまた心臓が跳ね上がった。
「うぁ!?あ、ご、ごめん!」
私が振り返ると、
黒子くんがじっと私を見つめていた。
そうだ。
すっかり忘れてた。
この人が居たんだ。
「あの。橋本さん。」
黒子くんはじっと無表情で私を見つめる。
「は、はい!?」
私も黒子くんを見つめ返す。
時折、後ろの道路を走る車のライトが眩しくて
見つめる黒子くんが逆光で真っ黒になる。
少し肌寒い風が
私の頬をかすめ、
その沈黙もより一層長いものに感じさせる。
車が通り過ぎ、黒子くんが見えたとき、
黒子くんは小さく深呼吸をした。