第40章 理不尽な願い。
父「部活動をやっているそうだな。お母さんに聞いたよ。」
るり「うん。バスケ部のマネージャーをしてるよ。」
私がそう言うと、
父は小さく笑った。
父「そうか。お前はバスケが好きなんだな。」
るり「…うん。」
父「るり。お前は彼氏は居るのか?」
その予想外の父の発言に
私は思わずポカンとした。
るり「…いないよ。なんで?」
父「そうか…。実は大事な話がある。」
父はじっと真っ直ぐ私を見つめた。
るり「…。」
父「お父さんの会社が上手く行っていないんだ。このままだとこの家を引き払わなければいけなくなる。」
重々しい空気が流れる。
るり「そっか…。じゃぁ、また小学校の頃みたいにアパートに住むの…?」
父「それは出来ない。もう僕たちはあの頃の暮らしは出来ないんだよ。るり。」
どうして…?
そう聞きたいのに
口に出来なかった。
私はあの狭いアパートの家が好きだった。
狭いから寝る部屋は一つしかなく、
私と父と母と三人で川の字になって寝ていた。
寝る時間はバラバラでも
そこには家族の時間を感じられた。