第38章 変化していく日常。
私は辞書を元の棚に戻すために
何冊か辞書を抱えた。
そんな私を見て虹村先輩は笑った。
虹村「お前ってなんか小動物っぽいな。」
るり「…っへ!?」
私が目を丸くしていると、
虹村先輩も棚に辞書を直し始めた。
虹村「なんつーか…守ってやらなきゃって思うっつーか…」
虹村先輩は笑っていた。
るり「…えっと…ありがとうございます。」
虹村「お!ちゃんとプラスに取ったな。」
るり「はい!」
虹村先輩は私から辞書を受け取ると、
きれいに辞書を並べた。
るり「…あの、先輩はどうして部長を赤司くんに譲ったんですか?」
少しだけ気になっていた事を聞いてみた。
虹村先輩はあと2~3ヶ月でどっちにしろ
部活は引退だったはずなのに、
どうして最後までやり通さずに赤司くんに譲ったのか…。
虹村先輩は真っ直ぐな人で、
何でも最後までやり通しそうなイメージがあったので
少しだけ引っかかっていた。
虹村「…そうだなぁ。それがチームのためだと思ったからだ。」
虹村先輩は少しだけ寂し気に笑った。
その時は
その寂し気な表情の意味は
わからなかった。
るり「…チームのため?」
私が首をかしげると、
虹村先輩は辞書を開きパラパラと捲りはじめた。
虹村「お前もわかると思うけど、いずれあいつ等は俺らを越える。それに赤司は俺よりずっと主将に向いてるよ。」
虹村先輩の開いたページには
"奇跡"の文字があった。
虹村「まぁ…それだけじゃねぇんだけどな。いずれわかるよ。」
そう言って虹村先輩は辞書を閉じ、
棚に辞書を戻した。