第37章 永遠の憧れ。
しばらく歩くと、
先輩に肩を担がれ、
泣きじゃくる黄瀬くんの後ろ姿があった。
るり「黄瀬くん!」
私が名を呼ぶと、
黄瀬くんは立ち止まり、
しばらくすると振り返った。
笠松「…はぁ。先、行ってるぞ。」
笠松先輩は黄瀬くんから手を離すと、
控え室の方へ歩いて行った。
支えをなくした黄瀬くんがふらっと壁にもたりかかる。
私は急いで黄瀬くんを支えた。
黄瀬「あ、るりっち。悪いっスねぇ。」
黄瀬くんはヘラっと笑った。
るり「えっと…お疲れ様。」
黄瀬「…うん。ありがとう。」
黄瀬くんはヘラヘラと笑っているようだが
どこか無理しているようだった。
黄瀬「本当は、るりっちにカッコイイ所見せて、るりっちを俺に夢中にさせようと思ったんスよー。」
黄瀬「でも、やっぱり失敗しちゃったっス。」
黄瀬くんは笑いながらうつむいた。
るり「…黄瀬くんはかっこよかったよ。いつだって私の憧れでキラキラしてて…今日はもっとキラキラしてた。」
黄瀬「…かなわないっスねぇ…。」
黄瀬くんは静かに笑った。
るり「…?」
黄瀬「ちゃんと諦めようと思ってたんス。でも、やっぱり目の前にすると諦めたくないって思ってしまう。初めて君を見たときは…悲劇のヒロイン!って感じでイライラしたんスよ。」
るり「…。」
黄瀬「でも…全然違った。思った以上にしっかりしてて、思った以上に強くて…俺は君に何度も助けられて…何度も憧れたっス。そしていつの間にか好きになってた。」
黄瀬くんの目はうるみ始めていた。
黄瀬「気がつけば好き以上の感情になっていた気がするっス。誰にも渡したくなくて、俺が君を守っていたかった。傍に居ないと寂しくて、目にすると愛しくて…ダメっスね。諦めの悪い男なんて最悪なのに…」
そう言って黄瀬くんは目に溜まった涙を
ぬぐって、顔を上げた。