第37章 永遠の憧れ。
るり「す、すいません。」
私が慌てて拾い集めると、
黄瀬くんも手伝ってくれた。
黄瀬「あんた、バカなんスか?」
黄瀬くんはクスクスと笑いながら、
ストップウォッチを拾い集めると、
カゴに入れた。
るり「え?」
黄瀬「俺、イジワルしたんスよ。なんでお礼言うんスか?」
黄瀬くんは私にカゴを差し出した。
るり「いえ、助けて下さいました。ありがとうございました。」
私はカゴを受け取った。
黄瀬「…過保護すぎるんスよ。あんたもそんな何も出来ない人じゃないのに。」
黄瀬くんがボソっとそう言った。
るり「…ありがとうございます。」
黄瀬「あ。でも、ちゃんと困った時は言うんスよ!…その、俺も助けるから。」
るり「はい。」
私がそう返事をすると、
黄瀬くんは満足気に笑い、
ボールを手にとって、
戻って行った。
それから私は次第に
一人で仕事を任せてもらえるようになった。
そして、
彼は私が困っている時にいつも目の前に
どこからともなく現れた。
まるでヒーローのようだった。
決して私に甘くはしない。
でも、厳しくも優しかった。
きっとそれは
みんなの中の"可哀想な神谷さん"のイメージを
払拭してくれようとしていたのかもしれない。
可哀想と同情する事が
相手にタメにはならない。
そう教えてくれた気がした。