第36章 人事を尽くして天命を待つ。
それから、私は人混みを避けながら
控え室へ向かっていた。
「るり。」
名を呼ばれてはっとなり
足を止めた。
赤司くんが私の前にいた。
るり「…赤司くん。」
赤司くんはいつもの優しい赤司くんだった。
赤司「今日の試合。君は、僕と真太郎どちらに勝ってほしい?」
るり「…え?」
じっと私を見つめる赤司くんの表情は
どこか悲し気で…
私もその質問の答えを出せずに
ただ、黙り込んでしまった。
赤司くんは静かに笑い、
私の頭を優しく撫でた。
赤司「どちらにせよ、僕は負けない。決勝で待っているよ。」
そうして、去って行く赤司くんの背中を
じっと見つめていた。
いつも私の手を引き進んでいた
彼の見慣れた背中は
中学の時より
少しだけ大きくなっていた。
私は控え室へ歩き始めた。
"どっち"に勝ってほしいかなんて…
私にはわからなかった。