第34章 本音。
しばらく歩き回っていると
紫原くんは売店でお菓子を買っているところだった。
るり「紫原くん。」
私が呼びかけると、
紫原くんは少し赤くなった目をこすりながら
不機嫌そうにこちらを見つめた。
紫原「…何?励ましに来たとか?…そういうのまじ迷惑なんだけど…。」
紫原くんは売店のおばちゃんからお菓子を受け取ると
私を睨みつけた。
るり「…そっか。ごめんね。」
プライドの高い彼には余計なお世話だったか。
私はその場を去ろうとした。
が、紫原くんは私の腕を掴んだ。
紫原「…本当に帰らないでよ。」
紫原くんは頬をぷうっと膨らませていた。
るり「…。」
紫原「そういう時は、帰らずに励ますもんでしょ?るりちんバカなの?」
紫原くんはさっそくお菓子のフタを開けた。
るり「…ごめん。」
紫原「…るりちんのバーカ!バーカ!」
紫原くんはボリボリとお菓子を食べていた。
でも、少しだけ声が震えていた。
紫原「るりちんのバカ…どうして俺を選ばないの…?」
るり「…え?」
私は紫原くんを見つめた。
紫原くんの目には涙が溜まっていた。
紫原「だって、赤ちんと一緒に居たって、るりちんは絶対幸せにはなれないもん。赤ちんは絶対にまたるりちんを傷つける。そうわかってるのにどうしてまたバスケなんかしたの?」
るり「…どうしてだろう…。」
紫原「俺だったらるりちんの事絶対幸せにするし、るりちんが嫌がる事絶対にしない。だからさ…マネージャーなんてもうやめて…俺と一緒に居ようよ。」
そう言って紫原くんは私を抱きしめた。
紫原くんの身体は大きくて、熱くて、
少しまだ汗の匂いが残ってて、
身体から振動する声が
いつもより少しだけ
低く聞こえた。