第9章 交差した想い
オレは絶句した……。
時音は時音なりに、オレの幸せを願って自分の想いを閉じ込め、オレをずっと見守っていた…。
なのにオレは約束したにもかかわらず、確信を持てずに時音のことを勝手に諦め、見捨て…今の現実に目を背けていた。
いま…ようやく解った。
オレは彼女が"九尾の狐(時音)"と本当は判っていたんだ。
なのに確信がないと言い訳をしていた。
そして、この南野秀一の幼馴染みとしても彼女のことが好きだった。
幼い頃から、"九尾の狐(時音)"と判っていて好きだったんだ。
自分でも気づいていた。
でもオレは見てみぬふりをして…。
その代わりが、喜多島だった……。
何と言っていいのか、言葉を失ったオレの代わりに時音が声を発した。
時音「……秀一」
だが、その声は今にも泣きそうな…震える声だった。
時音「…ううん、蔵馬。私…正直もう蔵馬といるの…疲れた…」
「え?」
時音「辛くて、苦しくて、切なくて…でも、恋しくて…。
だけど、蔵馬の幸せを考えたら…私が身を退くしかないもの」
「……時音?」
オレはゆっくり時音に近づき、彼女の顔を覗いた。
「っ!!」
彼女の表情を見た瞬間、胸にグサリと何かが刺さったような感覚に溺れた。