第8章 心の繋がり
七月末。
学校も夏休みに入り、暑い中今日の町は賑わっていた。
今日は町内の花火大会。
沢山の出店がある中、頭上には赤い提灯が飾られてある。
秀一と花火大会へ行く約束をしている私は、お母様に浴衣を着せてもらっていた。
桜音「はい、出来ましたよ」
「わぁ…」
鏡の前に立ち、自分の姿を見る。
緋色に蝶柄のデザインで、帯は黄色。
背中まである漆黒の髮は今日はポニーテールでアップにされ、蝶の髪飾りが付けてある。
桜音「とっても似合っていますよ」
「お母様、ありがとうございます」
桜音「フフ、さぁ早く行ってらっしゃい。
外で蔵馬が待っているのでしょう?」
「はい!では、行って参ります」
桜音「えぇ、行ってらっしゃい」
お母様に見送られ、急いで玄関へ行く。
赤い紐の下駄を履いて、戸を開けた。
「秀一!お待たせ」
蔵馬「あぁ、っ…!!」
秀一は私の方を見て、一瞬目を見開いた。
蔵馬「時音…その格好は…」
「コレ?お母様に着せてもらったの。
似合う…かな?」
私が遠慮がちにそう聞くと、秀一は涼しげな顔を向けてきた。
「…秀一?」
蔵馬「…あ、いや、似合ってるよ…」
秀一は苦笑いを浮かべながら私に言った。
これはきっと…ウソ…。
似合わなかったんだ……。
「あっ、ありがとう。早く行こ!」
蔵馬「…あっあぁ…」
私は無理に笑顔を作り、明るく振る舞った。
暗いところを、見せない為に……。