第7章 救出
その頃、時音たちは廃工場に到着していた。
時音「!!おかしいわ…八つ手の妖気が弱まっている…」
燈「そうですね…一体何故…」
そんな疑問を持ちながら、時音は日和から降りた。
時音「誰か他の妖気を感じる…二人いるわね。
一人は判らないけど、もう一人は…」
そこで口を紡んでしまう時音。
言わなくても、燈も日和もそれが誰かはわかっている。
燈「…………蔵馬様でございますね?」
時音「………」
燈が答えると、時音は無言で頷いた。
燈はわかっていた、何故最近時音の元気がないのかを…。
いや、最近ではない。中学二年生になってからだ。
だから燈は、今まで蔵馬の話を持ち出したりしなかった。
だが、今回は話が別だ。
おそらく時音は、この戦いの後に麻弥を家まで送った後、蔵馬と二人きりで話し合うつもりなのだろう。
そして……
この先は考えなかった。
時音「……燈、先に行って中の様子を見てきて」
燈「……わかりやした」
時音の指示通り、先に工場の中へ進み出した。
―――――――今は…そっとしておいた方がいいですね…
時音の護法式だからこそわかる、冷静な判断だった。
あそこで声を掛けても、どうせまた一人で抱え込んでしまう。
時音はそういう人だ。
どんなに自分が悪くなくても、無理に成し遂げようとして最終的に自分自身を追い詰める。
それが時音の長所であり、短所なのだ。
優しすぎて、自分の事になると自分の気持ちをはっきりと伝える事が苦手な性格で、責任感が強く、おまけに負けず嫌いな為、結局全て自分で背負い込む。
式神としてもそんな主人が心配だが、何を言っても聞かないことを解っているからこそ何も言わず、後は本人の気持ちに任せようと考えたのだ。