第37章 忍び寄る影

灯夜と燈は雪菜の元へ向かってた。
邪魔をしてくる妖怪はまだ何匹かおり、それを倒しながら先へ進んでいる時だった。

「「っ！」」

急に頭の中にある映像が流れ込んできたのだ。
思わず二人は足を止めた。

「これは…」

燈「雪菜さんの意識ですね」


────お前ら氷女という化け物は、この呪符に触れるだけで火傷をするようだなァ。

────や、やめて…！

────それェ

────あぁぁあぁ！！

────ひゃあはは！そうだァ、もっと泣け！！そして涙を沢山流せ！！


垂金の部下が雪菜を抑えつけ、彼女に氷泪石を作らせる為に垂金が氷女に弱い呪符を当てている記憶だ。

「…………なんて酷い事」

今度はある男性が雪菜に優しく話し掛けている記憶が流れる。


────隙を見て必ず助け出してやる。

────……………。

そんな男性を、不安そうに見る雪菜。

────故郷にあんたと同じ年頃の娘がいてな………。


「この男性は…」

燈「雪菜さんを助けようとしたのですね」


────チャンスだ！垂金が海外旅行に出た。警備も薄い、今日しかない！

────でも………！私がいなくなったら貴方が………

────バカ野郎！人の心配してる場合か！！

男性は雪菜を連れ外へ逃げようとする。出口が見えたその時。

────!!?

────尻尾を出しおったな裏切り者が！

垂金は男性が雪菜に親しくしている事に気づいており、海外旅行というのは垂金の罠だった。
垂金の両脇にいるスーツを着た部下が銃を構える。
男性はとっさに雪菜を壁側へ押しやり、代わりに男性が何発もの銃を浴びてしまった。

────いやぁぁぁぁぁ！！

雪菜の瞳から涙が溢れ、それはコロコロと氷泪石となって床に転がり落ちた。


雪菜の意識はそこで途絶えた。
灯夜と燈は暫く動けなかった。

「………酷い。酷いよ！どうしてこんな…」

自分も涙が流れそうだったのを必死に堪えた。
両手をギュッと握りしめ、手から血が流れる。

燈「灯夜様、急ぎましょう。雪菜さんが待っています」

「……うん」

コクリと頷いた灯夜は、さっきよりも早いスピードで走り出した。
燈も一息ついてから、灯夜の後へ続いた。