第37章 忍び寄る影
急に何処からか声がし、灯夜の隣に現れたのは、薙刀を構えた一匹の妖狐、燈だった。
「燈!!」
茨木「これはこれは…。土御門 時音の元にいると思えばコイツの元にいたとはな。
いいのか?主人の側についていなくて」
燈「その言葉、そっくりそのままお返しする。何故また今になって現れた?」
茨木「時期が来たんだ」
茨木童子の言葉に眉を潜める燈。灯夜には冷や汗がツーと流れている。
茨木「さて、お喋りはこの辺だ。そろそろ戻らなければオレが怒られてしまうんでね。では…」
去り際に煙玉を叩きつけられ、目の前が霞んで何が何だか判らなくなる。
煙が晴れた頃には、茨木童子の姿は無かった。
燈「………逃したか」
茨木童子の姿が無くなり、二人は警戒を解く。
「燈、時音の所に行って。心配になってきた…」
燈「いえ、姫君から下された命令は貴女達をお守りする事でございます。
ならばあっしは、最後まで貴女をお守りする事が先決です。
姫君なら大丈夫です。澄がついていますし、おそらく蔵馬様もいるでしょうから」
「…そう」
燈「あっしらは早く、飛影殿の元へ向かいましょう。こうしている間にも彼は人間に手を出しているやもしれやせん」
「…うん。そうだね」
時音の事を気にかけていた灯夜だったが、今は雪菜や飛影の事を優先すべきだと考えを変え、燈と共に雪菜の元へ向かった。