第37章 忍び寄る影
その頃、灯夜は自分に攻撃を仕掛けてきた相手と向かい合っていた。
左手に本を具現化し、戦闘準備に入る。
「どうして…何故お前がここにいるの?茨木童子!!」
茶色の短髪を揺らし灯夜の前にいる青年・茨木童子は、日本でも有名な伝説で出てきた酒呑童子。その部下だった鬼だ。
大昔、大江山で盗賊の頭だった酒呑童子の副首領だったのが茨木童子。
酒呑童子一行は、討伐隊によって殺されたはずだったのだが、茨木童子だけは生き延びていたのだ。
日本では、酒呑童子は日本三大悪妖怪の一人として恐れられており、その中には玉藻も含まれている。
同じように、玉藻と酒呑童子は魔界でも恐れられていた。
そして、その二匹は敵対関係であった。
どちらが本当に強い妖怪であるか。
魔界の強者は狐か、鬼か…。
その争いは、二匹の妖怪が人間に倒された事によって収まるはずだった。
しかし、それは今まさに蘇ろうとしているのだ。
茨木「オレが何故此処にいるか?お前の脳みそも随分と愚かになったな、緋神子の姫・灯夜よ。
聞かなくてもわかるだろう…」
「時音が狙いなんでしょ」
茨木「フン。解っているなら聞くでない。
それに、そう身構えなくとも、今日は挨拶しに来ただけだ。
お嬢に余計な事はするなと言われているからな」
「…………」
そうは言うが、やはり警戒心は解けない。
しかも今回は相手が悪すぎる。
寧ろ警戒を怠ってはならない状況だ。
茨木「おっと、そろそろ時間だ。オレはお嬢の元に戻るよ」
「ちょ、待って…!」
?「そう安安と逃がす訳にはいかないな、茨木童子」