第37章 忍び寄る影
~蔵馬side~
時音「本当にどうかしてるわよ」
「まあまあ」
飛影を探しに行くように言われた俺達は、廊下を歩いているところだった。
さっきのやりとりのせいで完璧にご立腹な彼女に、オレは頭を抱えたくなる。
時音のご機嫌取りはかなり大変だからだ。
まあそこは姫様らしいというか、お嬢様らしいというか……色んな意味で。
コエンマも面倒な事をしてくれたものだ。
時音「ていうか、飛影を探す意味あるの?」
「まあでも、一応探してみよう」
時音「幽助達が出発してるのに、彼がここにいるわけないじゃない。とっくに山奥の何処かよ」
「念のためだよ。ほら、時音もそろそろ機嫌直して。ね?」
時音「……………」
未だに仏頂面の時音の頭をポンポンと撫でる。
こういうところはまだまだ子供っぽくて可愛いと思う。本人に言うと怒れるので言わないが。
取り敢えず、今は飛影を探すのが先決だ。
まあ、時音の言う通り、既に屋敷に向かっているだろう。
心当たりのある所を徹底的に探し、飛影が興味の無さそうな所も一応探してはみたが、やはりいない。
時音「ていうか、蔵馬。飛影の妖気を感じない時点でいないって証拠なんじゃないの?」
「気配を消している事もあるだろう」
時音「………ソーデスネ。蔵馬トハ口デ勝テル相手ジャナイノニナァ。私ッテ本当ニ馬鹿デスネェ」
「…………。コエンマの所に戻ろうか」
オレがそう言うと、納得したのか今までの機嫌の悪さが嘘の様に直り、顔には満面の笑みが浮かんでいる。
全く、世話の掛かるお姫様だな。