第37章 忍び寄る影
私は耳を疑った。は?今何て言った?
私はリモコンを取り、巻き戻しボタンを押す。
コエンマ<彼女の身元を聞けば動かざるを得まい。娘の名は雪菜。飛影の妹だ>
もう一度巻き戻し。
コエンマ<娘の名は雪菜。飛影の妹だ>
……………もう一度。
コエンマ<飛影の妹だ>
あー、はいはい妹ね。飛影の。
「飛影の妹!?!?こんな可愛い子が?こんな捻くれ者の妹!?ウソでしょ?!?!」
飛影「煩い!殺すぞ」
蔵馬「あぁ、じゃあ初めて会った時に寝言で呟いていた"ユキナ"とは彼女の事だったんですか。意外ですね、ここまで飛影が妹想いな兄だとは思いませんでした」
飛影「黙れ!!」
普段のツリ目を更にツリ上げる。相当堪に障ったようだ。
「ねえ、もしかして飛影が人間界に来た理由って…雪菜ちゃんを探す為?」
飛影「………。」
何も答えない。けど、多分そういう事なんだろうと思う。
すると飛影は既に終わっていたビデオを取り出し襖を開けると、日が沈んだ街へと姿を消して行った。
「……どうするつもりなのかしら」
蔵馬「幽助にビデオを渡した後、骨爛村へ向かうだろうね」
「まさか、一人で!?」
蔵馬「おそらく」
幾ら何でも無茶だ。
しかも、飛影なら雪菜ちゃんを監禁していた奴らを、人間を殺すかもしれない。
そうなったら、霊界からの厳しい処分が下される。
蔵馬「心配する事はないよ」
「え?」
蔵馬「飛影は幽助を充分信頼している。たった一人で敵地に乗り込むなんてマネはしないはずだよ」
「...ならいいんだけどね」